ワンオフ物の価格差

部品を一品モノで作ろうとして見積もりを依頼すると、各所で全く金額が異なることは多々あります。

直接ものづくりに携わらない方には中々この差が何故なのか分かりにくい部分。

例えばオーリンズのフォークに取り付けるキャリパーサポート、ラジアルマウントのサポートを作るとして、
ラジアルマウントのサポートだと穴空けが2方向必要。

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これはウイリーさんの製品

昔は本当にこう言ったものを2軸のフライス盤で作るお店もありました(当然こんなデザインのものは作れないですが)

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2軸というのは、主軸が上下して、テーブルが1方向(一般的には左右方向)にだけ動く機械。
2軸だと途中で加工物を一旦取り外してまた向きを変えてテーブルにセットして位置出しして…
なんとかとりあえずカタチにはなりますが、加工途中で加工物をテーブルに再々セットしなおせば当然精度は落ちるし、直線基調の形のものしか作れずデザインに自由度もないし全く同じ物を複数作るのはまず無理。


3軸だと上記の2軸に追加してテーブルまたは主軸が前後方向に動くので、肉抜きのデザインなんかにはR加工も入って自由度も出てくるけど、やはりどうしても穴空けの方向が複数あると、途中、加工物を取り外して再セット(段取り替え)する必要があるので精度出しにも加工にも時間がかかる。
けど、普通のデザインのステムKITやCP2696用などのキャリパーサポートなんかを作るには3軸の加工機でほぼ問題なく作れる。

で、もっと複雑な形状のものを作る場合には5軸の加工機というのが用いられて、形状は小型機/大型機で色々あるけど、
イメージ的には

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簡単に言うとフライス盤のテーブルがグルグル回転する。
穴空けも複数方向からいけるし、

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みたいな形状のものも作れる。

CP2696用のサポートを作るのに、5軸加工機でも勿論作れるけど、高い機械を使って作ればそれなりの請求が来るし、結果的に3軸の加工機で作ったものと同じ形のものが出来るならわざわざ高い機械を使って作る必要もない、、と。

じゃあ安価な2軸の機械を使って半ばハンドメイド的な製品で価格が下がるかと言うと、あまりに無骨なデザインではそもそも製品として需要が無かったり、発注する度に少しデザインが違ったり精度にばらつきがあったりというのでは現実味が無い。

何気なく書いた図面でも、肉抜きのデザインや一部のR面取りの為に5軸の機械を使わないといけない(使いたい)、という例は多々あったり、
2ピースで作っても問題ない物をワンピースで作ろうとしたばかりに加工機械が変わって加工費が倍増したり。
肉眼でぱっと見は同じような仕上がりでも、3軸の機械と5軸の機械とでは細部の仕上がり精度が違っていたり。

そんな絡みでぱっと見は同じような物を作っても価格が全然違うという事が多々あります。

言い方を変えると、ぱっと見は同じようなものでも、精度が全然違うという事ですが。

単に図面を描いたら物が作れるという次の段階として、
加工の方法とコストまで考えてデザインするのもまたものづくりには必要なのかな、と。

加工屋さんと話していると、出来上がった製品、何に使うんだろうと思って見せてもらったら、え?そんな用途ならそこの精度要らなかったじゃないですか、とか、そのR加工って要らなかったじゃないですか、それだったらもっと安く早く作れたのに、、なんて事も多々あるみたいです。