シリンダーブロック

ちょっと預かり加工モノで行き違い。
 
シリンダーブロックの再生・・・
 
面研、ボーリングとやるわけですが、Zの場合は既に周知されつつある
スリーブの緩みが付きもの。
 
で、この場合はスリーブを新たに製作するか購入してブロックに圧入、その後のボーリングとなります。
 
で・・・
 
売られている一般的な社外スリーブ(LAスリーブ)の場合、購入したものを即そのまま圧入とはなりません。
外径の計測、切削加工、ツバの計測、切削加工が必要です。
ワイセコピストンに付属しているスリーブもLAスリーブですので、キットに付属しているものを更に加工して使う必要があります。
そして圧入後にボーリングとなります、キットに付属しているからと言ってボーリング不要なわけではありません。
またその際、スリーブ外径をいくつに設定するかは発注する側が決定します。
今後ボーリングを複数回出来る様にと欲張ってスリーブ肉厚を必要以上に分厚く残せば、シリンダーブロック側の切削量が増えます。
特にZ1シリンダーをベースに75㎜を超えるピストンを入れる場合はある程度シリンダーブロック側に肉を残してやらないと乗っているうちにブロック側が伸びてスリーブが緩んだり最悪の場合シリンダーブロックが割れます。
 
Z1ベースの場合はオークションでも安く手に入るスリーブの緩んだ1000シリンダーを購入して、そのスリーブの外径整えて900シリンダーに圧入、70.5~72㎜ピストンを使用するのも一つの手ですし、
逆に1000に乗っていてスリーブが緩み、900シリンダを購入して、そいつに1000スリーブを入れて再生した人も居ますが・・・
まあ、考え方によってはそれもありかなとは思います。
 
と言うわけで、シリンダー再生にもそこそこお金かかります。
ピストンキット価格+ボーリング代では仕上がりませんし、上記のような手間がかかるため加工屋さんによっても価格は上下します。
決して私が間抜いてぼったくっているわけではないので・・・
 
それとついでにシリンダーネタ。
 
大体よくあるパターンで、空冷4気筒のシリンダーブロックは変形、歪んでいます。
極端に大袈裟に書くとこんな感じ
 
イメージ 1
で、これを面研して修正しますが・・・
 
イメージ 2
 
大袈裟に書きますが、こういう状態に。
わかりますよね、これじゃ変です。
でも、現実はこういう作業を修正面研と呼んでいます。
研磨量が極僅かだからこれで不具合無く動きます、とりあえずの問題はありません。
 
ただ、どうせやるならスリーブも入れ替えたいし・・となると
 
イメージ 3
 
スリーブ抜いて下を面研。
実作業では上側はまだ面研しません。
あと、シリンダーの穴の垂直度は出ていません。
画像では横方向だけですが、現実には前後方向にも微妙に狂っています。
 
この状態でスリーブ入れるためにボーリング
これで垂直は出ますが、元穴とは微妙にセンターがずれます。
ここでも新たに元のシリンダーピッチで加工するのが大前提です。
 
イメージ 4
 
この後で製作したスリーブを圧入、ボーリング、最後に上面研
 
イメージ 5
 
これで終わり。
 
って、面倒なように見えますが、普通の加工屋さんではこのような工程でやっています。
 
ただ、仕事で精密工作機械使った人のある方なら疑問が沸くと思います。
 
はじめの面研時って、加工基準はどこ?
何基準で工作機械にセットするのか?
 
基準面が何も無い・・・
 
結局そこは作業者さんの経験と勘になります。
通常は左右端部加工面の高さを揃えます。
もっとも、加工屋さんの仕事内容からするとZのブロックの長さなんて直6の乗用車やトラックのエンジンから比べればごく小さい物ですが、小さいからこそ微妙な誤差が残りやすいですからね・・
 
逆を言えば、上側だけ削って精度を語ったり、他所の仕事や仕上がり数値にに難癖付けるのは無意味とも言えます、
まあ、上記の加工を行っても超神経質な事いえばドエルピン穴やなんかも微妙に狂ってるわけですが・・・
 
で、ヘッドも同様。
面研磨修正した時点で、厳密に言えばカムのジャーナルラインも狂うし、燃焼室形状、容積も狂う。
 
要は再生加工って言っても、辻褄の合わせあい、誤魔化しの上手さの競いあいみたいな部分もあります。
 
もっとも、日産L6をいじった経験のある人なら可愛らしいレベルですが。
あっちなんかもはやブロック、ヘッドはブランク材みたいな扱いですからね・・・
 
久々に長ったらしいメンドクサイことつらつらと書きましたが、簡単に言うと旧いエンジンでびしっと走らせようと思ったらそれなりに手間とお金はかかるよ、ってことです。
 
で、上記のような神経質加工やらないとダメなのか?っていうとそうでもないのがZの良いところ、いい加減なところで。
元のエンジンが酷い状況でなければ、多少の歪ならガスケットの材質の進化や締め付けトルクで普通に何も漏らさずに走る事もできるし、とりあえず乗るには問題ないってレベルで組む事もできる。
 
それが例えば馬力の差となって一目瞭然に現れるか?と言うと、それもまた微妙なところで。
 
寿命に差が出るとしても、なにせバイクがバイク、Zで年間2万も3万も走る人はほぼ居ないし、比較対象も無いままに「○○加工は耐久性がエンジンの寿命を延ばす」とか言われてもよくわかんねーな、ってのが実情。
金属表面処理も同様で、その手の比較検討するなら同じエンジンで気筒毎に処理、未処理の部品を組まないと耐久性の比較なんか出来ないし。
先日もちょっと載せましたが、走行13万kmのノーマルエンジンですら、そこそこ普通に動いていましたからね・・・
何を持って寿命と言うのか考えさせられます。