ものづくりとカスタム

ちょっとコメント欄に登場した「モナカ合わせの中空ステム」。
 
自分が今知る限りでは、仕事として作られているのは2店、Z系乗りならおそらくそのうち1店は皆さんご存知かと思います。
 
中空って、理屈から言うとステムとしてはベストに近い構造。
 
軽さと剛性を両立させようと思うと、中空構造と言うのは構造力学の面から見ても優れていますが・・・
 
当たり前ですけど、中空だと1ピースでの製作は事実上出来ないのでどうしても複数部材を溶接接合しての製作となります。(頑張って中空に限りなく近いものは鋳造であればアグスタF4などがありますが・・・)
 
複数部材、これ、逆に言うと部材を組み合わせると言う事はステムの上下オフセット、フォークオフセット、フォークスパンを自在に設定可能。
勿論フォーク径の変更も容易。
 
そんな理由でかどうかはわかりませんが、二昔前のレーサーのステムに使われていたのは知られている通りで・・・
 
ステムを1ピース削り出しで作るとなると相当な量の巨大な部材が必要になるし、コストの面でも人件費を抜きにすれば材料費だけで見れば複数部材で作った方が抑えられる。
 
じゃあ、複数部材を溶接接合した中空ステムがなぜ普及しないのかと言えば、理由は簡単、理屈上では優れていてもそれを作る為にはモナカ部の手作業による板金加工、溶接技術、そして溶接時の固定冶具の製作・・・
更に精度を追求すれば溶接一体化後にステムシャフト圧入部、フォーククランプ部を一括工程でボーリング仕上げと、手間が半端じゃない。
更に溶接性や板金加工を考えると強度に優れても加工性に劣るジュラルミン材を使うのは難しい。
 
結果的にジュラルミン、2017材のムク材をNCでプログラムして、中空構造は無理でもH型断面やC型断面に肉抜きしてサクサクっと削ってしまったほうが安上がり、結果的に現在の一般的社外ステムの形状と製法に至る、と。
 
それでも世の中にまだ中空ステムを欲する人、作る人が居る理由。
そんなのいたって簡単、結果的に出来たものがカッコいいし、それなりに裏付けされた理屈があるから。
台湾や中国でざくざくっと削られたビレットパーツなんかと比べると・・・
あまりこういう表現は好きではないですが、作り手の気持ちと言うか魂と言うか、そういうのが部品から滲んでると言うか、現物見せてもらってそう思いました。
多分、今、そのステム装着してる人って、現物を目の当たりにしたらもう価格なんかの問題じゃなく「俺、これ欲しい!」の気持ちが抑えられなかった人達だと思います。
 
 
ホイールなんかも・・・、社外ホイールで主流の鍛造材の削り出しホイールと過去の遺物?鋳造中空スポークマグホイール。
削り出しホイールも、解析技術、シュミレーションの進歩でギリギリのところまで肉を落とせるようになり、鋳造中空マグホイールは品質の安定性やコストの問題からはほぼ無くなってしまいましたが、中空構造と言うのはアルミホイールでは現在も市販車に使われているのを見ればわかる通りで理屈上は非常に優れているし、ある意味、今後二度と作られない過去の技術を代表する製品かもしれません。
 
最新の部品だけをくっつけていくだけじゃつまんねぇ・・・
結構そんな病に侵されてる人って多いのかも。
自分含め。