金属はいきもの
仕事では鉄鋼材を相手に奮闘しています。
一般的な鋼材、いわゆるSS400にはじまり、自社製の高張力鋼、700~800mpa以上相当の特殊材までいろいろ。
で、こういういわゆる「鉄」でモノを作るとわかるけど、鉄って本当に優れた、面白い金属。
物の形状にもよるけど、例えば20m位の長さのある構造物を作ると、原寸よりも最終的に10mm~20mm位短くなる。
つまり縮んでしまう。
つまり縮んでしまう。
鉄は溶接で熱を入れると、どんどん縮んでいく。
だからあらかじめ仮組を長くしたり、部材長を長めにしておく。
勿論、真っ直ぐ作りたいものも、溶接していくとどんどん変形して曲がったり反ったりする。
で、これをどう直して製品にするのかというと、プレスで押さえるわけでもないしガンガン叩くわけでもない。
直すのもまた熱。
「歪み屋」と呼ばれる専門職のおっさんが、バーナーと水ホースだけでぐいぐい直していく。
縮めたい所を炙り、縮んでほしくない所は水で冷やし続ける。
見る見る間にまるで手品のようにふにゃふにゃに曲がった鋼材を真っすぐ伸ばしていく。
逆にこの技術でモノの成型もできる。
例えば原油を運ぶような巨大タンカーの船首部分、水をかきわける船底の一番先の半球型になった部分なんかも、一枚物の鉄板から職人さんがバーナーと水だけで曲げていく。
この方法が最も正確に早く強くできる、嘘みたいな本当の話。
この方法が最も正確に早く強くできる、嘘みたいな本当の話。
そう考えるとバイクのフレームなんてホント針金みたいなもの。
というか、知識なくフレームに手を加えることがいかにバカなことかが分かる。
補強を入れたつもりが、返ってフレームにストレスを与えまくってるだけ、なんてケースはそう珍しくないと思う。
鉄鋼製造業に携わっていると、いろんな構造物のフレーム部分に異種金属を溶接するというのは無い話でもないんだけど、その場合、溶接部の管理は物凄く難しい。
実際、同じ鉄系の金属で引っ張り強度の違うものを溶接するときには、弱い方の金属に合わせた溶接棒を使用するのが常識。
実験的に逆のパターンをやるとわかるけど、たとえば普通の鉄(SS400)にクロモリ材のような強い物を溶接する際に、クロモリ用の溶接棒を使うと、一瞬奇麗に付いたように見えるんだけど、実際には柔らかい方(SS400側)で大概内部割れが出ている。
事実上、機械的な強度は全くない。
実験的に逆のパターンをやるとわかるけど、たとえば普通の鉄(SS400)にクロモリ材のような強い物を溶接する際に、クロモリ用の溶接棒を使うと、一瞬奇麗に付いたように見えるんだけど、実際には柔らかい方(SS400側)で大概内部割れが出ている。
事実上、機械的な強度は全くない。
実際、整備業界にいた時にフレーム補強、塗装後に塗膜下で補強部の割れが出ている車両を結構な数目撃した。
ただ、塗膜に覆われているのでオーナーさんは気付いていない。
パウダーコートなんかだと、まず見えない。
ただ、塗膜に覆われているのでオーナーさんは気付いていない。
パウダーコートなんかだと、まず見えない。
大概、この手の場合は補強材に強すぎる金属が使われていたり、異種金属に対して溶接棒の選択が適切でなかったりするから、いくら溶接部材のすり合わせをしていても割れてくる。
半自動(炭酸ガス溶接)でウンコ盛りした後に、グラインダーやサンダー等で成形されている場合は事実上母材同士がくっついていないことがほとんど。
それこそ、アロンアルファでくっつけているのと同じレベル。
いわゆる国産チョッパーカスタムにはこの手の適当仕上げが多い。
それこそ、アロンアルファでくっつけているのと同じレベル。
いわゆる国産チョッパーカスタムにはこの手の適当仕上げが多い。
複雑に入り組んだ形状のパイプ材を半自動溶接でくっつけるのは、はっきりいって事実上無理。
それこそ被覆アーク、手棒溶接の方がしっかりくっつく。
それこそ被覆アーク、手棒溶接の方がしっかりくっつく。
で、補強後の話。
クレーンのフレームなんかは、バイクのフレームと考え方がよく似ている。
しなる部分はしなる、大事な部分は強固に作る。
沢山の部材を溶接して作るから、寸法的に完璧に作っても、溶接歪みによる内部の残留応力が残っている。
残留応力が残っていると、しなる部分にとっては非常に具合が悪い。
残留応力が残っていると、しなる部分にとっては非常に具合が悪い。
破断を招くから。
なので完成後、一度窯で焼く。
焼きなましをします。
25m位ある窯で焼き、徐々に冷やす。
これで内部応力を取り除き、初めて本当に完成。
バイクの場合は、補強後、そのまま塗って終わり。
引っ張り応力ビンビンに残ったまま。
だから補強は難しい。
あ、焼きなましとか言って間違ってもフレームを野焼きしたりしないように…
まあ、あんまり余計な心配してもしょうがないけど。
自分のJだって、20か所近く手を入れて10万マイル走ってるし。
で、アルミ合金はもっともっと神経質。
ここからは素材じゃなくてエンジン組みつけの話。
エンジン組むのも、数をこなしていくと気付く事がたくさんあります。
まずトルクレンチと締め付けトルク。
これ、物凄くセンスが問われます。
マニュアルにある指定締め付けトルクって、あくまでもメーカー指定の部品を新品に限りなく近い状態で組んだ場合の数値。
自分がエンジン組んでいる様子を見ている人からよく言われました、
「なんでちゃんとトルクレンチ使わないの?」って。
いや、使いますよ、必要だと思う部分には。
でも、長いことメカニックやってた人なら分かってもらえると思うんだけど、締め付けトルク4キロ以下とかだったら手の感覚の方が正確だったりします。
いや、正確どころか、旧い車両の場合は手で締める方が母材の異常やネジの痛みに敏感で、余計なトラブルを未然に防げる事もしばしば。
理屈がわかってないから締め付け順序もめちゃくちゃ。
対角締めなら何でもOKと思っていたり、
J/ZならクランクケースM6ボルトとクランクメインベアリングM8ボルトを締める順序を間違ったりする。
ヘッドカバーを締める順序も間違ってるからすぐ漏れる。
カムホルダーは緩める時にもセンスが必要。
カムホルダーネジ山が痛むのは実は緩める時がほとんど。
エンジン組む時には理由を考える。
なんでここだけネジロックが塗ってあるんだろうとか、
なんでここのネジだけ40mmじゃなくて42mmなんだ?とか、
なんでこのネジはくびれてるんだろうとか、
なんでドエルピンが必要なんだろうとか、
なんでここにだけワッシャーが、とか、
なんで同系モデルのエンジンでカムホルダーの締め付けトルクが変更してあるんだろうとか、
部品の設定には、全てに意味があるから、それを考えて組んでいけば
極端な話、マニュアルすら必要ない・・・かもしれない。