本業は鉄相手の仕事です。
 
モノは超巨大な物から薄板パイプ材までイロイロ。
 
曲げ・・・溶接・・・切断・・・板継ぎ・・
 
接すれば接するほど、鉄って面白い素材。
 
熱が加わると、多分皆さんが想像している以上に動きます。
 
加熱すると膨張して目で見ていても分かる位に長尺材なんかはグイグイ伸びます。
 
で、一度赤熱したものを冷やすと、今度は元の寸法よりもぐっと小さくなります。
 
で、加熱した部分はサンダーで擦ったりすると手の感覚でも分かる位に部分的に硬化しています。
 
構造物を作るには溶接が欠かせませんが、いくら治具で固定して溶接していっても、あらぬ方向に曲がったり反ったりしていきます。
 
で、それをまた焼いて修正していく。
 
見かけ上は図面寸法に収まっても、、内部には色んな方向に応力がかかったままです。
 
結果としてそのまま使用するといずれ応力の集中した部分が割れたり破断します。
 
クレーンなんかは定期的に弱い部分の非破壊検査と部分補修が行われます。
 
実際、ウソみたいに厚さ30mmや50mmの鉄板が割れることが有ります。
 
 
こういうのを日常的に見ていると、フレーム補強とか修正がいかに本来難しい作業であるかを痛感します。
 
パイプ材をあとから溶接で追加していくというのは、一歩間違うとフレーム本来の寸法を狂わせるどころか、結果的に寿命を縮める可能性も充分有り得ます。
 
修正もまた然り。
 
当然ですが、修正で元通り100%の性能(寸法精度、強度)は出ません。
 
一度曲がった物を無理やり力を加えて伸ばすだけの作業なので、例えばディメンション的に純正以上の数値、(ネックのピボット軸に対する垂直度)が期待できる可能性は有りますが、必ずそのしわ寄せはどこかに来ます。
 
フレーム修正時に必ずダミーでエンジンケースを載せておく必要があるのは、ネックの僅かな修正でもダウンチューブにまでその影響が及ぶため、フレーム単体で修正を行うと、次にエンジンを載せた際に、エンジンマウント穴があわなかったり、エンジン搭載位置がねじれてしまうからですが、
だからと言ってエンジン載せておけば、今度は必ずどこかにそのしわ寄せが来ているのが現実です。
 
一般的にZで修正してしわ寄せが出易いのは前側エキパイ出口付近と背骨。
 
修正したフレームの塗装を剥がして観察すると、大体この辺りに修正屋さんの苦心の痕が見られます。
(塗装の上からは当然何も分からない)
 
特にZ1系はダウンチューブ前側、エキパイ間付近が弱いようで、2度目の事故をしたりすると、ここがパックリと破断する事もありました。
 
また、一部で行われているロウ付けにも要注意。
 
ロウ付けは確かに母材に対する悪影響は少ないのですが、パイプ同士を繋ぐには向いていないというか、非常に手間と技術の必要な作業です。
 
あえて名前は出さないけど、誰でも知っているロウ付け補強のフレーム。
 
そこそこ距離を走ったらタンク下ネック補強部分の繋ぎ目、塗膜が浮いてる?
 
まさかと思い、2ポンドハンマーで補強パイプを叩いたら・・・
 
ポロリと補強材が外れてしまったという実体験も有ります、長期に及ぶ繰返し応力に持たなかったのか?或いはロウ付けの腕が悪かったのか?
 
フレームに手を加えるときは、ある程度技量と知識のあるところに任せないと怖いですね。
 
未だに半自動機の炭酸ガス溶接機でやってるところもありますが・・・
必ずしも悪いとは言いませんが、大概が母材が溶け込んでいません、表面に盛っただけの溶接で、やたら熱ばかり加えてしまっていることが大半。
 
理想の補強、修正は治具で全て拘束後に溶接、その後で丸ごと窯に入れて焼鈍(しょうどん)、焼きなましですね、これで内部応力を除去した後にブラスト、塗装。
 
本来はこうあるべきなんですが。
 
大型の天井クレーンのトロリーフレームなんかは必ず焼鈍します。
そうでないとあっという間にクラックだらけになってぶっ壊れます・・・
 
鉄って、奥深いですよ。
 
だから2号機はフレームに手と熱は入れないつもりです。