改造って

エンジンブロー、これまで何度も経験しました。
 
丈夫といわれるエンジンだって、やはり無茶すれば壊れます。
 
けど無茶よりも怖いのが無知。
 
大昔、いじり始めてから一番初めに悩んだのが社外ピストンを入れた際のピストンの縦傷、それに続く白煙、オイル下がり。
 
当時、二十歳そこそこだったかな、今みたいにインターネットも普及していないし、手探り状態。
 
リアランスの設定が悪いのか、組み方が悪いのか、何故か数千キロ走ると白煙が出始めて、オイルを消費し始める。
 
リアランスを変えてみたり、ピストンリングの合口の向きを変えてみたり、
当時は中古のシリンダーなんてのもなかなか手に入らなかったし、えらく苦戦した。
 
で、結局行き着いたのが
 
「オイルは大事だぞ」って事実。
 
なんだか当時から「Zはオイルさえ入ってりゃ壊れない」なんて風説・・、いや思い込みがあったので、使うオイルなんて全然気にしてなかった。
 
それこそ減れば足す、位のテキトーさ。
 
多分、「海外での粗悪なオイルにも耐えられるように、クランクはあえて組み立て式のローラーベアリングを採用した」、って記事か何かを読んで、いつのまにか勝手に
 
「粗悪なオイルでも壊れない」
 
っていいように解釈して、思い込んでいた気がする。
 
ある日、ようやくエンジンを組み付け、オイルを注ごうとしていたらその場にいた先輩に
 
「お前、そんなオイル入れたら壊れるで・・・ピストン社外入れとるんだったら、クリアランスも若干広いじゃろうが、そんなオイルじゃ持たんし、縦傷だらけになるで」
 
とまじまじと言われ、ようやく気が付いた。
 
あ、俺のエンジン、純正ノーマルじゃないんだった・・・
 
以来、アレコレとオイルを試し、そのオイルのブランド、品質によっていかにエンジン寿命に差が出るかをしみじみ実感した。
 
自分でエンジンをばらしていると、明らかにいいオイル、悪いオイルの判別が付くようになる。
 
たしかにZ/Jはオイルさえ入っていればエンジンは回り続ける。
 
でも、これだけははっきり言える、オイルの良し悪しでエンジン寿命は2~3倍変わる。
 
ダメなオイルって、一度ヒートさせると、以降、油温上昇が明らかに早くなる。
 
そして白煙も出てないのにやたら高速走ると減る。
 
オイル交換をすると、見違えるように調子に差が出る、良くなったように感じる。
 
そういうオイルはダメ。
 
バラしてみると、スリーブ、ピストン前後方向に無数に傷が入り、クリアランスも広がっていることが多い。
 
こうなってるとイタチゴッコ。
 
リアランス広がるから、ますます燃焼ガスの吹き抜け、ブローバイガスが増える。
 
燃焼ガスが吹き抜けるって事は、クランクケース内に未燃焼のガス、一部ガソリンも流れてるって事。
 
そのガスがますますオイルを劣化させる。
 
抜いたオイルが排ガスくさい、なんてのはもうダメな兆候。
 
オイルは急速に劣化していくから、ますます油膜切れ、潤滑性能がダウンする。
 
各部のフリクションが増大、熱がより多く発生する・・・
 
そして更に各部は磨耗・・・と加速度的にエンジンは傷んでいく。
 
ならば早めにオイル交換すればよいものの、おろかなことにそこへ
 
「継ぎ足して誤魔化す」
 
なんていう、何の解決にもならない処置をする。
 
継ぎ足し継ぎ足しで、やっている事は、老舗のうなぎ屋の秘伝のタレと同じ状態。
 
 
確かにフルノーマルで、渋滞を避けて郊外を走るような使い方をする車両ならそこそこ中級グレードのオイルで十分だけど、社外ピストンを入れたり、排気量アップしてるって車両なら、オイルをケチるのは自殺行為。
 
それでいて
◎●のピストンはダメだとか、ダミーヘッドボーリングがどうだとか、プラトーホーニングがどうだとか、WPCだのMOS処理だとか必死になってる人、お店が意外と多い。
入れているオイル銘柄を聞いて唖然とすることもしばしば。
 
まあ、確かにダメなピストンは存在する。
例えば初期ロットと現行ロットで製造方法やデザインが変わっているピストンなんかは、それは明らかに初期ロットに不具合があったって事だし、ましてや昔、鋳造で作っていたものを今は鍛造で作って売っている、なんて場合は明らかに鋳造では無理があったと作り手自ら認めたようなものだから、そういう
「アヤシイピストン」に手を出さないのは当然として・・・・
 
改造したから壊れるとか、改造したから寿命が縮む、なんていうのはある程度は覚悟しておくべきだけど、その前に意外と日常のメンテナンスとか、或いはセッティングを手抜きしているケースが多い気がする。
 
余談だけど、ヨーロッパ製の4スト大排気量のモトクロッサー、オイル交換は指定のオイルを「3時間」「5時間」なんていう車両も存在する。
これ、守らないと本当に壊れる。
最先端の技術、素材を用い、計算しつくして作ったエンジンでも、極限の高性能を求めるとオイルの劣化=即ブローという側面を持っている。
 
なんだか話が良くわからない方向になってきたけど、そんなこんなで改造は楽しい。
 
たかだか元バイク屋流れの男が、広島の田舎の片隅でアレコレ試行錯誤してるわけだけど、
負けたくないよね、プロと呼ばれる人達に。
 
勝てないってわかってても。