あと何年乗れるか

Zは生誕から40年が経ち、J系も30年が経ちます。
 
しかし、10年前に予想していたよりも周囲ではまだまだ沢山の車両が走っている。
 
勿論、コンディションや周囲を取り巻く環境含めて、10年前より「いい状態」とはいえないけど。
 
酷使されるようなサーキットではすっかりその台数も減ったし、通勤、通学に使う人はもっと減ったと思う。
 
よく、「あと、何年乗れると思う?」というのが話題に上がります。
 
完全オリジナル、純正に拘るとすれば限りなく絶望的な状況と言えますが、
 
さほど拘らないのであれば、個人的考えですが「日帰りツーリングに使う程度」であれば、あと20年、30年は現状似た状況が続くのではないかと思っています。
 
勿論、事故等含めて絶対的台数は減るだろうし、そもそも化石燃料がいつまで安定供給されるのかわかりませんが、おそらくは代替燃料使ってでも乗る人は乗るでしょう。
 
オートバイに限って言えば、50年、60年前の英国車、またはナックルヘッドに代表されるようなハーレーの製造後60年、70年経つようなモデルも現存して、マニアはまだそれを走らせています。
 
勿論、相応の投資と苦労は伴うでしょうが、要は「金さえあればどうにかなる」という状況に変化はないと考えています。
 
自分のようにスペアエンジン山ほど積み上げて、スペアフレームにスペア外装まで持っている、なんて奇人変人も最近僅かながら増殖しているようですし、皆さんそれなりに先のことを考えているのかな・・・と。
 
ただ、乗り続ける上でモデルごとにかなり障害になっている部分が増えてきているのもまた事実です。
 
Z1なら初期マニアでさえなければ大概のエンジン部品は探せるし、アンダーパワーが功を奏して?
不思議と歴代Zで最もクランクが強いのか?、状態の良い車体の割合が多いのでO/H時にバルブガイド周りの定番の磨耗を覗けば、絶望的になることが最も少ないんですが、さすがにクラッチ、ミッションはかなり消耗している車体が目立つようになりました。
特に日本国内で長期乗られている車両だと、ミッション、クラッチは傷んでいます、やはり広大なアメリカをただひたすら5速で走り続けるのと、狭い日本でガチャガチャとシフトしまくって乗るのではダメージの度合いが全く異なるようです。
最近ではJ系ミッションへのコンバートが一般化してきましたが、これも上手い事組むにはそれなりのスキルが必要だったり・・・ですが、救命措置としては非常に有効だと思います。
あとは発電系統が全くもって欠品ですが、多少の問題ありとはいえリプロ品があります。
長期の使用と過度なクオリティーを期待しないのであれば、オリジナルの極上品、デッドストック品を探して乗れずに放置するよりも、リプロ品をさっさっと組み込んで、定期的に発電量点検、必要に応じて修理、交換、と言うほうが健全な気もします。
 
KZ1000A1/A2に関しても似たり寄ったりですが、クランクの生存率で言うと若干Z1系より低いかな・・・という印象があるんですが、何故か不人気車両ゆえに?程度の良い車体が多い気がします。
 
mk2になると、悩まされるのがクランク。
冗談抜きで「どこがZ最強クランク?」ってくらい、位相ズレが起きている率が高い、GPz系ほどじゃないけど・・・。
明らかにこれはクランク自体が設計、製造された時点で抱えている問題だと思う。
最近はもう初めからリビルトするつもりなので、位相ズレはしてないけど磨耗の進んだクランクよりも、少しズレてるけど走行距離の少なそうなクランクのほうが価値がある気がしています。
あ、ちなみに多少ずれたクランクでも、その車両しか知らないオーナーさんだと、それには全く気付きません。
むしろそれが「味」だと勘違いされている例も。
少し位ずれていても、キモチワルイ振動を起こしながらレッドゾーンまで回ります。
で、ズレが進行すると、徐々に振動が増大、バルブとピストンが当たった・・・なんて目に遭ったりします。
これ、自分自身も一度経験しましたが、クランクがずれる瞬間っホントあっけないです。
ギア抜けして、エンジンレブって、ギア入れなおしたら「ズンドコズンドコ」変な振動・・・
え?たったコレだけで?って位にあっけない。
あとはmk2の発電系も完全欠品。
こちらもリプロや、他車流用に頼るしかない。
 
Z1000J/R系になると、構造上のトラブルは、カムチェーンのアイドラー廃止によって激減。
しかし、言い方変えれば次世代のコストダウンマシン。
ヘッド、ケース、特に素材に難有り。
ヘッドはお約束のカムホルダーボルトのズル抜けはもはや定番。
問題は、大概その修理が過去に行われていて、修理方法が手抜き、下手糞だった場合。
もうこのヘッドは修理不能って例がここ数年で激増した気がする。
新品ヘッドは度重なる値上げでバルブセットで20万円位しますが、それでも新品が手に入るのは救われます。
あと、意外に言われていませんが排気ガイドの抜け、クラック。
改造や、キャブセットの不良で排気温度高い状態で長期間乗っていると、これまた例外なくバルブガイドが緩んで、ガイドが上下運動したりします。
J/Rは特に出やすい。
ミッション系統は前期型に限り、ドライブスプロケットの固定方法に問題がありますが、後期のシャフトに変えてしまえば解決するし、対した問題ではないと思います。
あと、最近、何故だかヘッドカバー、カムチェーントンネル後方が割れている車両が増えました。
ヘッドカバー自体がカムチェーンのテンションを受けているので、疲労破壊するようです。
クランクケースはもうお約束の後部マウント破損と、シフトドラム右受け部の異常磨耗が目立ちます。
 
で、GPz系になると、一番泣かされます。
各箇所に最終型ならではの改良?が施された故に1000系との互換性がない部分も多く、
上記のJ系の弱点にプラスして、元々若干ハイリフトなカム故に、カムホルダー部への負担も高く、
実働でもヘッドが最悪な状態のものが多い。
ヘッド単体の絶対個数の少なさからくる、無理矢理修理、強引修理で更に事態が悪化している例も多数。
クランクにいたっては、もう、何で?どうして?と言うくらいに確率で位相もズレてくるし、スラスト方向にもずれてくる。
このあたりはmk2クランクに対する認識と同じです。
パルシングローターがスラスト方向にガタガタ動いている車体も、見慣れた感さえあります・・・
ゴロゴロ音を「空冷4発特有の音」なんて、平気で謳う販売店もあったり。
当然、1000系とはクランクの互換性無し。
ミッションも単体では1000J/R/Pとは互換性無し。
クラッチごとゴッソリならいけるけど・・・。
問題はそれに加えて、テキトー雑誌の「Z系最強エンジン伝説」
これが何故か「最強=頑丈」みたいな誤ったイメージに捉えられている。
あくまでも最高出力値が最強だっただけであって、頑丈と言う意味ではない、
むしろ、多くのZ専門店でも言われているけど、多くの要注意箇所を抱えたエンジンと思った方がいいと思う。
 
最も、当時はハイリフトだったカムも磨耗でそのパフォーマンスは発揮しないし、最高出力を狙った燃焼室形状が、一般的な使用用途において、なにかアドバンテージがあるとは思えない。
まあ、ある意味メーカーチューンのエンジンだから、そういう特殊性、プレミアム性が魅力でも有り、短命だった理由でもあると思う。
 
ただし、本当に突き詰めて組んだGPz系エンジンは、本当に速い。
自分も以前はGPzエンジンをイジって積んでいましたが、ピークパワー値はそのときが最高でした。
ただ、初めに秘蔵の新品クランクが数千kmでズレが出た時には笑えましたが、クランクのピン溶接対策後はノートラブルでした。
このあたりがやはり「それでもこのエンジンに拘る人」を惹き付けるんだと思います。
 
未だにGPzのカムなんかは高値で取り引きされていますが、カムって消耗品ですよ。
新品カム以外は、興味わかないですね・・・
中古ピストンは誰も買わないのに、中古カムだと売れる、何故でしょう?
 
って書いてみると、この手のエンジンが凄く神経質そうな印象を受けますが、
あくまでもトラブルが出るとすれば、の話です。
 
なにも難しく考える必要はなくて、バイクもクルマも機械だから乗れば磨耗するし、乗れば残寿命は短くなる。
ただ、どうせ修理するなら要所要所はついでに手を入れておけば、安心できるよねという、たったそれだけの事です。