中空シャフトの剛性を断面二次モーメントで考える

ある人と話をしていて、どうも話が噛み合わない事が。
 
シャフトの剛性。
 
オートバイの場合はこの手の話では主にアクスルシャフトやピボットシャフトを指すので、
剛性と言っても主に「曲げ剛性」を指すものと思います。
 
曲げ剛性、要するに曲げの力に対して寸法変化しないよって度合いの事。
 
これ、設計の勉強をした事のある人や、構造力学を勉強された人ならお分かりと思いますが、軸(シャフト)の場合は、断面積が同一であれば中空構造の軸の方が剛性はあがります。
 
ところがこの話がどこかで誤って伝わっているようで、”断面積が同一であれば”という仮定を抜きにして
"中空の方が曲げ剛性が高い”と誤認されている人(お店)もあるようで。
 
中にはピボットシャフトやアクスルシャフト、外径上げずに中空構造にしたものを
「剛性UP」なんて本気で信じている人も居るようで・・・。
 
曲げ剛性を上げるには断面二次モーメントとヤング率のいずれかまたは両方を上げるか、或いはシャフト長を短くするかのどれかしかありません、これはもう公式で決まっている。
 
ヤング率ってのは材質固有のものですが、シャフトに使う素材だとある程度限られた材質になるので劇的な変化は望めないし、極端に硬い素材(粘りの無い素材)で中空にすると今度は破断の問題が出てくる。
 
と言うわけで、断面二次モーメントに着目してやれば大体の”剛性"が比較できます。
 
難しい計算式は省略して、たとえばこれが外径15㎜の無垢のシャフトだと
断面積は177平方ミリ
断面二次モーメントは約0.25
 
これに内径8㎜の穴を開けると、
断面積は126平方ミリ
断面二次モーメントは約0.23に減少
 
ところがこの断面積177平方ミリに注目して、断面積が同じになるように仮に外径25㎜のシャフトを作ると、
内径20.㎜、肉厚2.5㎜のかなり肉薄の中空シャフトになります。
このシャフトの断面二次モーメントを求めると、1.13にまで増大。
断面積と長さが同じなので重量は同じシャフト、しかし断面二次モーメントは大きくなる。
これが「断面積が同一であれば中空構造の軸の方が剛性はあがります」の意味。
 
もっとも、どんな製品にも必ず安全率が見込まれているので、その安全率をギリギリのところまで削って多少部品の寿命縮めても絶対的な軽さを追求するのはレーサーや競技車両としての宿命だし、効果の高い改造だと思います。
 
ただ・・・
中空ピボットシャフトが折れちゃった、なんて話を聞いても、そりゃそうだろってのが自分の正直な感想で・・・
硬くて粘りの無い素材を使ったのなら尚更。