J系エンジンマウント

弱点です、J系。

前二箇所のラバーマウント、後ろ一箇所のリジットマウント。

ノーマル車両であればオイルパンとマフラーとステッププレートが繋がっており、幾分かは振動に対する減衰効果もあるのだけど、大概はそれも取り外されて、事実上、フレームとエンジンが固定されているのは後部のリジットマウント部の一箇所のみ。

ここにエンジンの自重だけでなく、加速、減速する度にとんでもないチカラがかかります。

アクセル開けるだけでフロント浮き上がるほどのモーメント力を受けているんだから、反面、それだけの力でドライブスプロケットはドリブンスプロケットに引っ張られている。

繰り返していればエンジンマウントボルトが曲がってきて、更にそのまま乗り続ければ曲がったエンジンマウントボルトがクランクケースにめり込みクランクケースを破壊、同時にマウント左のスチールカラーがクランクケースに食い込んでくる。

と、この手の車両を見た方なら割と見慣れた光景かと思います。


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じゃあ、このタイプのマウントって何の意味があるのかというと、誤解されている場合もあるのですが、決してフレームの補強効果を狙ったものではありません。
あくまでクランクケースのサポート、クランクケースに密着させて装着する事で可能な限りボルトにかかる力をボルト両端で受ける事でマウントボルトの曲がりを抑制して、クランクケースを保護するためのものです。
効果としては所謂S1風補強マウントと同じです。
ただ、このマウントもS1風マウントもそうですが、ボルト貫通穴が馬鹿穴では意味がありません。
可能な限りφ12に近い小さい穴でないと効果は半減、あるいは効果無しです。
同様に、クランクケースに対してクリアランスもたせてスコスコ余裕ではまってしまうようでも無意味です。

この"クランクケースに密着""可能な限りφ12に近い小さい穴"がこの手の部品のポイントで、逆にいうと既に変形してしまったフレーム、クランクケースには装着出来ません。
最低限、後部エンジンマウントボルトがエンジンを下からジャッキで受けた状態でボルトを叩かなくてもスムーズに抜き差しできる事、クランクケース後部マウント端面がトランスミッションカバーと同一面で仕上げられた状態であることが大前提です。

以前に製作した際、何名かの方に依頼され発送したのですが、クランクケースに干渉してどうやっても装着出来ない、とか、無理矢理叩き込んで付けたらどう見てもエンジンが傾いておかしい、との報告をいただきました。

ノーマルの部品構成であればかなり遊びが大きく作ってある為に気付かなかった部分が表面化してきます。

上記の理由で、既に問題を抱えている車両には装着出来ない、または力づくで無理矢理装着すると、クランクケースやマウントボルトにストレスを与えてしまい対策どころか逆に寿命を縮めたり、良い結果を得られない事もある為、どんな車両にも有効、万能という物ではなく、どなたにでも作って売ります、といった部品ではありません…

やっばり何かあった時に気持ちよくないですしね、お互い。

効果の程は既に10万km走行した車両にも継続使用しており、ケースもマウントボルトもほぼ問題無し、
それなりにパワーを出していて、早ければ2~3万kmでケース破損してしまう車両がある事を考えればそれなりの効果はあるものと思っています。

形状は似たようなモノを作っておられるショップさんで、それぞれマチマチですが、基本的に同じ考え、同じ狙いで作られている物と思います。

また、エンジンマウント前方を完全リジットマウントにしてしまう手法も後部マウントへのストレス低減という意味では効果大なのですが、反面、クランクケースにストレスをかける事になるので、クランクケースにクラックが生じた例もあります。
ただ、ラバーマウントのままでもクランクケース前方にクラックの出た例もあるので、リジットマウントだから絶対ダメとも言えないかなと思います。

J系はクランクの微小ズレが出ているものが多く、この振動がケースにストレスを与えている例もあるので、その辺りは複合的に考える必要もありますが。
ラバーマウントでもハズレのクランク入れてるとかなりイヤな振動が出ますし。

ちなみにJ系シャフト駆動モデルではエンジンマウントは後方もラバーマウントとなっています。
メチャクチャ快適です。