クランクケース合わせ面

古い空冷あるあるで、
クランクケースが上下2分割タイプのエンジン。
年数を経て合わせ面からじわーっとオイルが滲み出ているものもたまに。

漏れを止めようと締結ボルトのトルクをさらにかけたりしても悪化の一途、とかもたまに聞きます。

基本的に…エンジンに限らずアルミ鋳物のギアケースでは、オーバートルクはNGです。
トルクをかけたところでボルトの引っ張り応力が座面近辺に集中するだけです。

また、分解時に漏れが怖くて狂ったように液体ガスケットを合わせ面に盛る人も居ますが、
そもそも設計数値としてはケース合わせ面のスキマはゼロです。
特に速乾性で肉盛性のよいシリコンボンドなどは、塗布してからケースを組み付ける前にすでに硬化が始まり、ケース合わせ面の密着を妨げてスキマをあちこちに作ってしまうので、クランクケース合わせボルトの締め付けトルクを管理してもどうにもボルトが締まり切らない、グネッとした妙な手ごたえだったり、組んで数日するとまたユルユルになっていたり。
要するにケースがきちんと密着しないままエンジンを組んでしまうことになるので、後々またオイル漏れ、ボルトの緩みが酷くなればクランクシャフト、ミッションのベアリングアウターの遊び、ガタを招き…

修理するためにケースを開けたのに、結果、元より悪化させてしまうことも。

クランクケースを分解した時に、合わせ面全面にガスケットが厚く残っている場合は、結局、クランクケースを締め切らないままエンジンを組んで走らせていたということになります。

J系の最終モデルに近いクランクケースは、合わせ面の加工時の切削面の荒れが酷いので、どうしても面同士が「点当たり」「線当たり」になってしまう場合もありますが…

液体ガスケットは、スリーボンド製品でいうなら、1212は秒殺でエンジン組めるぜって方でなければケース合わせ面には向きません、1211の方が良いです。

逆にカムプラグなどのある程度の肉盛り性とか、整備後の早い硬化が必要であれば1212の方が良いです。

あくまでも私の個人的な経験による使い分けですが。

ちなみに、エンジンとは比較にならない精度の求められる工作機械の送り軸などで、ケース同士の動力伝達にウォームギアを使っているものなどでは、合わせ面同士の距離でギアのバックラッシ(ュ)が決定されるので合わせ面に精密研磨した合わせ面と同じ形状のライナー(シム)を噛ませてそのライナーを5/1000の精度で研磨してケース同士を組み付けます、この場合はメーカー指示で合わせ面には絶対に何も塗らない事、とされています。