MK2のエンジンO/H

お世話になっていたお客様に、MK2のエンジンO/Hについて相談を受けました。

ノーマル+αな感じのエンジンに仕上げるには?どうしよう?との事。

恐らく、純正O/Sピストン入れて、他は全てをリフレッシュする、位ではやや物足らないっていう事なんでしょうね。

個人的にはZ系はヤリ過ぎないほうが好きなので、

ヘッド自体の加工はJ系インシュレーターに合わせたポート段付き修正加工

あとはタコメーター取り出し口の廃止くらいでしょうか。

どうせならタコは電気式にしたいし、タコケーブルがうっとうしいので。

バルブガイドは測定して必要なら入れ替えますが、出来れば触りたくないのが本音。

母材は30年間熱に晒されて大分劣化が進んでいます、いくら腕のいい内燃機屋さんでも、やっぱり稀に
「これ、もう止めた方がいいよ、クラック出るかも」と言われることもあったり。

よく、Z系のバルブガイド周辺クラックが話題になりますが、その半分は入れ替え作業の失敗です。
自然に割れちゃうのは稀。

バルブは容赦なく新品にしますが、コレといった目的が無いならJバルブ流用のビッグバルブ化も必要ないでしょう。

デカけりゃたしかにエライような気もしますが、反面、セット長の違いやマスキングエリアの事もありますから、燃焼室やヘッド面無加工で行くならZ純正バルブをセットします。

カムは出来ればK395かヨシムラST1新品が欲しいところ、やっぱり磨耗したZカムだと気持ちよくないし、事実上純正新品カムも手に入らないわけで、バルブスプリングもJ純正で充分。

スプロケ加工でGPzやR2カムを入れることも出来ますが、面倒だしその両カムとももう欠品。

ピストンはノーマル+αを求めるならワイセコ71~72mm。
73だとどうしてももうワンランク上のヘッド仕様が欲しくなるし。
形状、重量、精度、価格の面からも誰も文句は無いでしょう。
ヘッドガスケットはワイセコ付属のものでもOKですが、様子を見て1100R純正メタルガスケットの選択もアリ。
ただし、厚さが違うのでセンターOリングの潰れには目を光らせて。
ベースガスケットはキット付属のものは使わず純正で。

KZ1000系で最も注意するべきはシリンダスリーブの緩み。
概ね90%の車体で緩んでます。
何故に緩むとまずいのか?ヘッドで押さえてるんだから大丈夫でしょ?と言われる方も居られるのですが、確か押さえてるから抜けることはありません。
でも、コトコト微妙に上下運動してるうちに今度は回り始めちゃう。
で、シリンダってX方向とY方向でクリアランス設定は変えてあるから、結局ピストンとのアタリがおかしくなってケムリ吐いたりするんです。

常温でスリーブの底をプラハンの柄で突いて動くようなら、諦めてスリーブは入れ替えます。
お湯で煮て、スリーブが触らずともコトンと落ちるようならもう諦めましょう。
ノックピン打ったり、ローレットやボンドで苦肉の策はせずに。
そんなのはインチキ中古屋のやることです。
どうしてもと言われればスリーブ外にメッキをかけて太らせて、再研磨して再圧入と言う手もありますが、コレも結構手間&コストがかかるの上に放熱性の面でもやや不利になるので、ワイセコなどから補修スリーブが手に入る今、必要ないでしょう。
キッチリ圧入すれば、底のOリングも無理に入れなくてOK。

あと、意外とスリーブはワンオフ製作しても安いケースもあるのでサイズによっては作ることもしばしば。
内燃機屋さんからすれば、それこそよくある作業みたいですから。

カムチェーンテンショナーは純正の半マニュアルでも構いませんし、PMCのマニュアルでもOK。
ただし、アイドラー式のエンジンなのでまずは気持ち緩めから徐々に様子見て締めこんでいきましょう。
冷えててチョイうるさい、暖まればそこそこ静か、位がベスト。

クランク、ミッションはアタマの痛いところです。
全部揃わないですよね、純正だと。
クラッチハウジングAssyは、今後の事も考えればJ流用キットで決定でしょう。

ミッションは・・・程度と予算次第ですね。
私なら手間かかっても減速比の優位性とアウトプットスプライン径の大きさに惹かれてJコンバートしますが、
Z用のリプレイスミッションもアドバンテージから発売されてるし、悩むトコロでしょうね。

クランクは多分、測定するとサイドクリアランスが規定値外になっている箇所が数箇所あると思います。
測定は規定値の記載されたマニュアルコピーを添付して専門業者に任せるほうが早いかも。
測定機そろえるのは工具買うよりも高いですから・・
いくら神経質に測定しても、結局新品は手に入らないから概ねOKなら芯だけ出ていればOKとします。
バラしてクランクベアリングさえ入れ替えれば元に戻るという幻想を抱いている人も居ますが、ピンだって減っています。
ステムベアリング入れ替えで、ローラー部だけ入れ換えてレースはそのまま組むのと同じです、諦めてください。

クラシックバイクですから、その辺に1/1000の精度を求めても・・・ね。
ケース自体の精度だって合わせ面にボンド塗布しないといけない程度のものです。
シリンダだって4気筒それぞれ垂直になってるでしょうか?

ホイールベアリングに精密機器用の高精度高等級のベアリング入れて喜んでるガキと同じですよ、精度ってトータルで見ないと何の意味も無い。
ここらにやたら神経質になっても作業が進まなくなります、そこらの見分けはもう経験値です、そこらが組み手の技量が現れる部分でしょうか。

そこらがJのいいところですよ、新品が買えるんですから。
勿論、新品でも測る必要はありますけど。

あ、Zでもクランク作ってくれるところは国内にあるんですよ。
好きなストロークで。
コストの面から単気筒、2気筒ではプライベーターでも製作依頼している人は居ます。
ただ、4気筒となると・・ね。
マネー次第ですよ、以前、センターピンと左右エンドのみ純正流用で見積もりお願いしましたが、夢に終わりました。
でも、クルマの一体式6気筒用ロングストローククランクなんてのは社外品として普通に売られているわけで、数さえ集まればもっと安くなるんだろうけど。

オイルポンプはオイルクーラー付ならGPz、無しならJポリス用で。
容赦なく新品でしょう、心臓です。

あと、予算に余裕があれば、各部WPC加工は個人的にもオススメです。

以上、そんな感じでした。

OKでしょうか、この場を借りて。