覚悟

あと10年位したら、MTC76㎜のハイコンプなんか組んでた自分を冷めた目で見てるんだろうな・・・
と思いつつ組んでる自分。
 
ボアアップ、ハイコンプのいい所って書く人多いけど、デメリットって書く人あんまり居ないからあえて書いてみる。
 
ピストンがでかいって事はスリーブもでかい。
当たり前ですがシリンダーブロックの剛性が落ちます。
ノーマルで乗っていても歪んでくるシリンダー、寿命は言うまでもなく縮みます。
もっとも、考え方によっては一度歪んだシリンダーは内部応力が抜けてきているので、きっちり適正サイズで欲張らずに少しだけ大きいスリーブに入れ替えれば新品シリンダーよりも寿命は伸びるかもしれませんが。
 
でかいスリーブ入れれば当然クランクケース側も多少は削るハメに。
シリンダーとクランクケースの当たり面は減ります。
シリンダーの熱は空冷とは言え実際はケース側に逃がしている面もあるので・・・
まあ、Jケースにスリーブ下端外径80㎜なら削る量は僅かだけど。
 
そんなピストン入れれば相応のカムも必要。
でもまあ・・・10㎜リフト位のカムにGPzスプリング位だとエンジン自体の寿命にはあんまり大差ない感じです。
GPzのバルブスプリングが固いって勘違いしてる人は結構多いみたいだけど、Z1ノーマルバルブスプリング準備してレートを測ってみると面白いデータが取れますよ。
インナーシム化で重量の意味では負担は減ってるし。
ただし、カムホルダーボルトが規定トルクできっちり締められるようなヘッドである事が大前提。
1本でもおかしな所があればそこから連鎖的にやられていってカムがぶっ飛ぶのはノーマルカムでも同じだけど。
当たり前だけど、カムのリフトが増えればタペットとの当たり面も辛い。
いいオイル入れてればそんなに劇的にノーマルとの寿命の差は無いけど、ノーマルよりいくらかタペットの寿命が縮むのは仕方ない。
高価な表面処理で寿命を延ばすか、傷んだら新品に換えてしまうかは組み手の考え方次第。
 
ノーマルカムで1200ccにしても乗れなくは無い。
排気量に対してバルブが開いてる量と時間が短すぎるからコンプレッションは異常に上がるけど。
16kg/cm2とか指しますね、普通に。
これで起きる弊害と言えば始動不良、スターターワンウェイ関連の破損、滑り。
そして熱ダレ。
過度にコンプレッション高いエンジンって、発熱量が大きいです。
後はエンジンブレーキの増大。
忘れがちだけど、コンプレッションが高いエンジンって言い方変えれば「クランク回すのが重たいエンジン」です。
スロットルON/OFFの度に駆動系にかかる負担はノーマルの比じゃないって事は覚悟の上で。
当たり前ですがホイールハブ、クラッチハウジング、トランスミッションドグ部に全てシワ寄せが着ます。
 
イカム(作用角の大きいカム)組んでオーバーラップを適度に取ってやったりして、適度にコンプレッション落としてやれば割とここらも気にならない感じにはなりますが・・・
 
書くまでも無いけどエンジンコンプレッション(圧縮圧力)と圧縮比は別物です。
 
エンジンコンプレッションはクランキング時に燃焼室にかかる最大圧力。
12kg/cm2とか表記されてるヤツです。
この単位から解ると思いますが・・・凄い力です。
ピストンのアタマにこれだけの力がかかる。
仮に・・・ですが、例えばJノーマルピストン、直径6.94cmで12㎏/cm2だとすると、ピストンのアタマはクランキングでの圧縮時に454kgの力を受けています。
これがもしピストン直径7.6㎝、仮にちょっと高めの部類によくある15kg/cm2になると・・・
680㎏になります。
 
50%増。
 
あくまでクランキング時だけの数値比較ですが。
 
多分、ここまで負担が増えてるって意識してる人って少ないと思います。
これは誰がどう組もうが覆るものではないし、どんなおまじないグッズを付けようが逃げられません。
 
当たり前ですがコンロッド、クランク・・・直結している部分に全てこの増加分は影響します。
寿命が同じわけがありません、確実に寿命は縮みます。
 
GPz1100系のコンロッド小端部が直径を18㎜にした上に更に最後の最後のモデルではコンロッド小端部の幅を大きくしている事が答えでもありますが・・・
(18㎜ピンクランクでも小端部幅に2種類あるのも意外に知られていません)
 
何かまた面倒くさいこと色々書きましたが、それでもやる!って自分はバカだと思うし、それを覚悟しなきゃ手に入らないものもたくさんある。
別に死ぬまでこの仕様で乗ろうと思っているわけでもないし。
やってる人は皆そうだと思いますが。