強制開閉式気化器

CRに代表されるレーシングキャブレター

最近はストリート仕様のマシンで使うのが普通で、それこそレーシングキャブレターと言いながらもレースでもサーキットでも使用しない通勤、ツーリング仕様のマシンにリプレイスパーツとして用いられる場合が大半。

或いは購入時からCRが付いていてノーマルを知らないままCRしか知らない人も。

そんな人から時折ご相談いただくのですが、乗りにくい、追い越し時、急開した時に回転が付いてこないなどなど。
セッティングをショップに依頼しても、A/F値もグラフも悪くないのに、何故?と。
試乗させてもらっても、さほど悪くない。

以前の記事でも書きましたが、比較的若いユーザーさんに多い気がするけど、そもそもこれまでに負圧式キャブレターやインジェクションのオートバイしか乗ったことが無い方、車はオートマしか乗ったことがないと言った方が、初めてこの手の改造車に乗って戸惑う部分のようで、
バイクとその改造部品に合わせた乗り方をする、という認識、感覚がそもそも無い世代の方が増えてきているのかな、と。

悪い意味でなく、何も知らないから初めはしょうがない部分なのかも。


私自身はCRがさほど気難しいキャブレターだとは思いませんが、やはり無意識に自分自身がエンジンが欲しがるだけアクセルを開ける、回転や負荷に合わせた乗り方をしているからそう思うだけかもしれないし、
おそらく今現在、CRキャブレターを普段使いしている方の大半はそれがもう無意識に感覚的に身についているから乗りにくいとは感じないだけで、ベストに近いセッティングが出ていても乗り方が無茶苦茶なら、それを知らない人にとっては強制開閉式のキャブレターというのは馴染めないものなのかな、と。
極端だけど、大昔の2ストマシンなんか、そもそも乗り手がバイクに合わせてやらないといろんな意味でマトモに走らないなんて時代を知っている人は尚更CRなんか余裕、って人も多いだろうし。

中には加速時にストール気味になるのをどうにかしようと、パーシャル域をかなり濃いめにセッティングしたりして苦戦している人もいましたが、やはり単にカブリ気味になるだけで根本解決にはならない。
これは加速増量機能無しでインジェクション車両を自分がやってみて思ったけど、そもそも加速増量無しで急開すると、A/F値はパーシャル13:1前後から一気に16~17:1まで薄くなるのはどうやっても避けられない。
これは燃料供給を吸入負圧にのみ頼る強制開閉式のキャブレターなら構造上仕方ない。

なのでキャブレターには加速ポンプ機能を備えているものが多い。

加速ポンプというと、FCRやTMRに装備されたレース用の装備と思われている人も多いけど、実はキャブレターとしては極々一般的な装備で、カワサキでいうなら大昔は排ガス規制に対応するために無茶苦茶スローとニードルで燃料を絞ってマトモに吹けなくなったKZ1000のVM+加速ポンプ付きに始まり、キャブレター時代のバルカンやW650のノーマル車両のCVKキャブレターには加速ポンプは標準装備されている。
しかもかなりの吐出量。
クルーザー的な性質のオートバイでは低回転からガバッとスロットルを開ける事も多いので、実際、これをキャンセルすると乗りにくくて仕方ない。
実際、W650のユーザーさんが更に燃費が良くなるのではないかと、ノーマル状態で加速ポンプをキャンセルして欲しいというので加速ポンプ機能を殺してみたら、結果燃費は変わらず、単に乗り難くなっただけですぐに元に戻した、なんて事も。

話が逸れましたが、車からクラッチペダルが消滅して、
オートバイも電子制御スロットル+インジェクション車のみになってきて、
もうその中で強制開閉式のキャブレターなんてのは、ダイヤル式の黒電話やなんかと同じく過去の遺産になりつつあるのかな、と。

多分この記事をここまで読んだ方は、んな事ねえょ!って思うかもしれないけど、もはやキャブレターセッティングを仕事として請けるショップすら探すのが大変というのが、こちら地方都市の現実。

時代は確実に流れています……